最初から最後まで本当に興味の尽きない話題で、趣味で読んでおくだけではもったいないくらいでした。全部、覚えてしまいたいし、国語でも社会でも英語でも授業に役立ちそうなものばかりでした。(“もったいない” という言葉も日本人的です)
言語文化論講義と、大学の授業みたいで、ちょっと難しそうな副題が付いていますが、『文化とはそんなに難しいものじゃない』 という考えを紹介し、日本人の特徴を浮き彫りにします。
これまで私が見聞きしたことのあるいろんな、日本人の特徴、エピソードなどが、ほとんど紹介されて、大変役立つ一冊です。興味のある高校生なら十分読めるでしょう。
そもそも人間における言語や文化とは何だろうという、考察から始まります。もちろん言語と文化は不可分ですから、日本語のキーワードでまずは日本文化の姿を探ります。キーワードとなるのは他の文化にあって日本語にないもの、または日本文化にあって他にないものですね。
その指摘は、どんな本でもよくなされますが、本書では例示が非常に奥深く、おもしろいのです。実に数多くの、古典や名著と呼ばれる作品を引用します。ここでも英語文化圏と異なることはもちろんですが、“儒教的発想をする東アジア圏” と、時に文化的にも地政学的にも一くくりにされる韓国、中国との大きな文化的差異が示されます。
この指摘は、ハンチントンの『文明の衝突』 でも明確にされていますね。本書ではさらに、ひょっとしたら“日本と西洋” の差異よりも、“日本と中国(韓国)” の差異の方が大きいのではないかとすら、ほのめかします。
そこまでをまとめる言葉として、筆者は、日本は『凹型文化』 だとします。
“自然との調和・一体化というのが日本人の自然観、宇宙観であり、他律・他人志向の処世を好み、非分析的で成り行き本位の思考方法を持ち、謙遜・自己修養の道徳感覚で、ささやか・陰影・風流という美意識を持つ。 ”
それが日本人の精神空間なのだということです。さらに続けて、宗教文化や法律、政治にかかわる言語に焦点を当てたり、文法を分析したり、自動詞が多いことを指摘。
例えば 『この電車は全車両禁煙車となっております』 『食堂はあちらになっております』 など、自分たちがそうしているのに、まるで自然現象のような言い方です。(ちょっとわかりにくいかな) その上、慣用句や名付けに見られる特色を考察します。
男子の名前に、誠・正義・孝行などの道徳意識、女子の名に、弥生・小春・小百合など自然に優しいもの。料理やお菓子には、月見・春雨・卯の花・うぐいす餅・さくら餅など。電車は、こだま・やまびこ・しおさい・あさぎり・銀河…。
きりがないのでやめますが、相撲部屋、お酒の名付け、などまで話は及び、海外の『ベートーベン号』という電車や『ケネディー空港』など、人の名を冠したものがほとんどないことも指摘します。
最後には高文化、いわゆる文芸作品についても日本的なるものを紹介、分析します。まだまだ、本当は、ここでご紹介したいことがいっぱい詰まっている一冊です。生徒ばかりではなく、講師はもちろん、一般の方にも広くお薦めしたい一冊でした。
http://tokkun.net/jump.htm
『日本人らしさの構造』 芳賀綏
大修館書店:315P:2100円
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