
昨日の黄砂、東京でもものすごかったです。おそろしいなぁ、と感じたのは初めてですね。外にとめておいた私の車などは、まるで泥水をかけられたようでした。韓国でも、学校が休みになるほど深刻らしいですね。
黄砂の原因は、温暖化などいろいろあるでしょうが、中国の大躍進政策(1958年から)の時に、当時の人口6億人がいっせいに、木を切り倒しました。そのあたりから、中国内でも生態系がくずれてしまい、大規模な自然災害が続いているように思います。
中国のプロレタリア文化大革命
、略して “文革” がどういうものだったか、高校の世界史の教科書には、“国内がこれにより混乱し、発展を阻害した” と簡単に書いてありますが、そこでは一千万人というおびただしい数の人が「敵」として、リンチなどで殺害されるという、凄まじい集団殺人もあったわけです。
他に逮捕、拷問、追放など何らかの被害にあったのは何と一億人!と言われています。(『知識ゼロからの現代史入門(青木裕司)
』) 全人口の6分の1ですか。
多くの資本家や知識人、教師、官僚、政治家が標的とされただけではなく、宗教も弾圧され、教会や寺院の破壊、チベットでも僧侶などが投獄、殺害されたりしました。恐るべき迫害の実態があったのですが、その頃の中国は鎖国のような状態で、正確な情報が出てきませんでした。
労働者の革命だということになっていましたが、実態は当時、国家主席を辞任していた毛沢東らが、劉少奇
や讃・ソ
たちの追い落としを狙った権力闘争なわけです。実際に劉少奇は奥さんが批闘大会というな名のリンチにかけられ、自らも殺されたようなものですし、讃・燭マ紅衛兵
に乱入され、子どもを4階から叩き落されて下半身不随にされてしまったそうです。
時代の空気もあったのでしょう、それを見抜けなかった日本の新聞などは文革礼賛の記事を書いてしまったということですから、どうしようもないですね。いまだにそのことで非難されています。
当の中国共産党がすでに、最大の過ちであったと認め、謝罪までしていますし、今では日本の教科書にもつるし上げの場面と思われる写真が載っています。ただし、毛沢東はそれを主導したのではなく、“利用された”ことになっていて、いまだに天安門広場に “国父” として肖像画が掲げられているんですね。

では文革の前、なぜ毛沢東は国家主席の座を劉少奇にいったん譲らなければならなかったのか。国民には人気がありながらも党内で力を失う原因となっていたのが、大躍進政策の大失敗です。
大躍進の政策当時、中国のほぼ全土を襲ったとされる飢餓があり、数多くの餓死者を出したのですが、このことは日本の教科書には出てきません。中国はそれをひた隠しにしていたらしいのですが、その死者の数は、1千5百万人から4千万人という途方もない数が言われています。Wikiでは、2千万人〜5千万人
と、解説されています。
つまり、あの文革での死者をはるかに上回る数の死者を出したのですが、実態は闇の中です。本書はその大躍進の政策によって、どれほどの死者が出ていたのか、どうして失敗したのかなどを丹念にルポルタージュしたものです。
中国はとても広大な国土で気候もさまざまですから、ある地域で不作であっても、別のところでは豊作ということもあるそうですが、調べてみるとこの時ばかりは濃淡はあっても、ほぼ全土に渡って餓死者が出ていたようです。自然災害ばかりではなく、人禍によってもたらされた飢餓だったわけです。
目次は以下のようになっています。
第1部 中国―飢饉の大地(飢饉の大地;立て!飢えたる者よ!;ソ連の飢饉 ほか)
第2部 大飢饉(飢饉の概観;河南省―嘘が生み出した大災害;安徽省―鳳陽について語ろう ほか)
第3部 大きな嘘(農民を救った劉少奇;毛沢東の失敗とその遺産;いったい何人死んだのか? ほか)
さまざまな証言や記録が出てくるのですが、とにかく恐ろしいのは飢餓の様子を記した部分です。もちろん作物は役人に取り上げられてしまいますし、草や木の実、土までも食べようとするわけです。
道端に死体が転がっている様子や、さらにまた、人食いの話が出てくるのですが、自分の子ども食べてしまうような状況が決して珍しくないのです。ちょっと読んでいて気分が悪くなるくらい多くの証言が載っています。筆者は3千万人が餓死したと推測します。
そんな厳しい状況であっても、農業政策の失敗を批判できないために、毛沢東には稲穂の上で子どもが遊んでいるというような報告しかなされないそうです。見かねて毛沢東に忠言した幹部は失脚してしまう。
この悲惨な状況の後始末をするために登場し、実績を上げてきたのが、現実主義者の劉少奇や讃・燭如「讃・燭里・陵k召ハ
『いい猫とはネズミを取る猫だ。その猫が黒い色をしているか、白い色をしているかは関係ない』
つまり “生産できれば良いので、やり方が社会主義的であろうが資本主義的であろうが問題ではない” という意味の発言がこの時期にされるわけです。
その成功を見て、このままでは権力を握られてしまう、資本主義を中国に入れるつもりじゃないかと恐れた毛沢東が、文化大革命に乗り出すわけですね。
抗日の英雄のキバは、自らの政敵や自国民にも容赦なく向けられていたんですね。事実上の独裁体制の恐ろしさが身に染みる一冊です。逆に、これまで中国を賛美したマスコミは結果的には、独裁者の暴走を許し、中国国民を苦しめ、近代化を大幅に遅らせたことにならないでしょうか。現在の北朝鮮と似ているとも感じます。
以前、『毛沢東を越えたかった女
(松野仁貞)』をご紹介しました。その有名女優は “中国には二人の神がいる。一人は毛沢東、もう一人は私、劉暁慶” という言葉を残していますが、やはり、毛沢東はアンタッチャブルな神の存在なんですね。
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『餓鬼(ハングリーゴースト)−秘密にされた毛沢東中国の飢饉』ジャスパー・ベッカー著 川勝貴美訳
中央公論新社:461P:2520円
